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イマカツルアーデザイナー
長井健太公式ブログ

God Hand KENTAS Design Lab

超デッドスロー特化型プロップベイト鬼ヴィラルRS!!

こんにちは、ルアーデザイナーの長井です。

今年の日本の夏は、平年に比べ平均2.36℃も高かったそうで、ここ数年、日本の各地で最高気温や熱帯夜の日数を更新するほどの暑さに見舞われていますが、この暑さの要因は海水温の上昇による影響が大きく、気候のみならず地球全体の生態系の分布図を大きく変えようとしています。今まで人間と接する機会の少なかった生物が人間と接する機会が多くなるなど新たな問題へと直面しています。

今年身近に感じたことは、蚊の出現が例年よりも少なく、実際刺されること自体減り、現在日本に生息する蚊にとっては住みにくい環境になりつつあるのかもしれません。それとは逆に熱帯地方に生息し、ウィルスや原虫などの病原体を媒介する厄介な蚊が近い将来、日本で猛威を振う恐れもあります。

また熱帯魚飼育者の飼育放棄等による河川等への放流により、日本に生息していなかった熱帯魚が目撃される事案があります。現在の日本の環境下であれば冬季の水温低下によって大部分が死滅すると言われていますが、このまま気温が上昇し水温も冬季で20度以下を下回らない状態になってしまうと、日本のいたるところで熱帯魚が泳ぎまわる時が来ないとも限りませんね。

さて、そろそろ開発コードネーム:ヴィラル100ブラックタイガーこと鬼ヴィラルRSが店頭に並び始めるころではないでしょうか。鬼ヴィラルRSはイマカツプロスタッフ河野プロプロデュースによるプラグ第二弾、超デッドスローに特化したフローティングプロップベイトです。大型のプロップを載せる浮力を確保し、水面での存在感を際立たせるため、先発で発売されたヴィラル70ボディを145%増幅、また障害物回避に貢献するFDガード装着用ストッパーとウェイトを即座に追加できるクイックチェンジャーハンガーを標準装備しました。また今回、鬼ヴィラル専用に設計した前後異形シンクロ回転プロップにより、フローティングプロップベイトでは業界一を自負するほどのデッドスローリトリーブが出来る仕様に仕上がっています。


[手前が鬼ヴィラル:全長100㎜、重さ14.5グラム]

 


[FDガードストッパーとクイックチェンジャーハンガーを標準装備(鬼ヴィラル用FDガードは別売りになります)]

 

 

エビをイミテートしたリアルなボディ形状は、水流抵抗の小さそうなスリムな見た目ですが、波打ったボディ形状とエビの関節を模した切り込みの深い造形により、他の同サイズミノー型ルアーボディに比べ、ボディの表面積は大きくなっています。そのため、より水流がボディに纏わりつき易く抵抗となり、リトリーブ時に適度な引き重り感を与えます。
このルアーボディに水流が纏わり付くと言うことは、ボディのリア側は乱水流が発生し、リアのペラ回転に負の影響を与える事を意味します。


[溝の深い関節を模した造形と波打つエビの形状が水流抵抗を生みだし、ペラの回転抵抗だけでは成し得ない適度なリトリーブ抵抗をロッドティップに伝えるのですが…]

 

 

初期の鬼ヴィラルRSのボディ形状は、ヴィラル70をそのまま拡大した形状で進めていました。完全に前後のペラが水中に入るスローシンキングモデルのヴィラル70では、リアのペラ回転に支障はありませんでした。一方、ペラ1回転の内、反回転は水面上にペラが出て水流を受けられず、ペラ回転に支障を来たし易いフローティングダブルプロップベイトの問題点として、フロントペラとフロントボディで受け流した水流は大変乱れた水流になっており、その乱水流をそのままリアのペラに受けても綺麗に回転し難く、酷い場合は途中で回転が止まってしまう事が起こるのです。

そこで鬼ヴィラルRSは、フロント側で発生した乱水流でもリアのペラ回転を良くさせるために、リアのペラは水掴みの良い三枚ペラに設定し、またフロント側で発生した乱水流を整流させる為にテール形状を大きく変更したことで、ライン弛ませ巻き等の異常なまでのデッドスローリトリーブでも前後のペラをシンクロ回転させることを可能としたのです。


[フロント側で発生した乱水流でもリアのペラ回転に支障をきたさない解決法は、水流抵抗の少ないスリムなボディ形状やボディ全長を伸ばしてフロントからの乱水流が弱まる位置にリアペラを設置する。リアペラをフロントペラよりも大きくする又はペラの枚数を増やす必要がある]

 

 

鬼ヴィラルRS に採用したペラはフロント側が水流撹拌力の大きい2枚ペラ、そして僅かな水流でも瞬時に回転する立ち上がりの早い3枚ペラをリア側に設置しています。また素材には、ペラの立ち上がりを重視し軽量化と強度を両立させたSUS304バネ材を使用しています。一般的にペラの素材として加工性が良く形状の自由度の高い真鍮素材が多く使われていますが、真鍮素材は比較的柔らかく、強度を持たせる場合ある程度の厚みが必要であり、また真鍮素材はメッキ処理が必須なため重量がかさんでしまうのがネックでもあります。そこで薄くても強く軽量化に優れた素材としてSUS304バネ材を選択、バネ材と言うだけあって反発が強く、加工が真鍮素材よりも難しく工場泣かせの素材でもあります。

 


[協力会社へ現物サンプルと図面を渡して数カ月、微妙なペラの角度等、意図した形状が出ずやり直し試作3回、過去に作ったペラの中で今回一番時間がかかったかも…]

 

 

この秋、デッドスローの新境地を開いてみてはいかがでしょうか?

それでは皆さん良い釣りを