イマカツルアーデザイナー
長井健太公式ブログ

エビよりリアルなヴィラル誕生!!
こんにちは、ルアーデザイナーの長井です。
つい先日まで茹だるような暑さで、日中の釣行は厳しいものがありましたが、いつの間にか過ごしやすく釣行には良い季節になりました。今夏は仕事も含め色々とバタバタとしていた事もあり、夏はあっという間に終わったと感じた今日このごろです。
さて、もう既に手にされているアングラーもいるかと思いますが、エビに全振りしたエビッシャーことヴィラル70が先日発売されました。
[初回生産モデルはスローシンキングタイプ。1秒間に約10センチ沈みます]
ヴィラル70は、イマカツプロスタッフの河野プロ完全監修によるプラグ第一弾で、テナガエビやスジエビが無警戒で泳いでいる姿をイミテートしたプロップベイトです。
エビの泳ぎと言ったら通常は尾尻を激しく折りたたんでキックバックする姿を思い浮かべますが、これはエビが外敵から捕食されないように身を守るための逃避行動であり、通常は腹側にある幾つもの腹肢を前後に動かし、水を掻きながら前方に泳いで行きます。また腹肢を前後に素早くなびかせ一定のレンジにホバリングすることもあります。
この無警戒に泳ぐエビの姿に、以前からプロップベイトを多用していた河野プロがプロップベイトをエビ型にしたらもっとバスは釣れるのではないか、と感じていたようで、河野プロが描いたエビ型プロップベイトのイラストから開発は始まりました。それにはいくつか搭載して欲しい機能やパーツなどがエビのイラストとともに箇条書きで書かれており、「こりゃ価格が高くなりそうだ」と私は瞬時に思い。開発に当たっては今江プロの意見も交え、「ああでもない、こうでもない」と頭から案を捻り出す日々を送りました。
[全長70㎜の中にエビの要素を凝縮したヴィラル70、テスト段階でダブルヒットも!!]
エビをイミテートするからにはエビの外観を360度、徹底的に観察し、一目でエビと認識できるようにディテールを忠実にデザインしました。特にエビ好き(食べる方)でもある私は、エビの腰と尻尾のデザインによってリアル感が増すことに気づき3DCADを駆使して形にしました。
[このヴィラルの腰と尻尾は見るからにエビエビしいでしょ!?]
そして、河野プロこだわりの1つであるエビの髭、エビの特徴的でもある長い髭をどのような素材で、どのようにルアー本体に装着するのか当初は色々な案が出ました。ラバー等の柔らかい素材の髭をルアーボディに装着したらフロントペラに絡んでペラが回転しなくなるのではないか、それであれば硬質ステンレスワイヤーのように硬い素材を髭にしたら良いのではないか、しかしワイヤーによってフッキングが悪くなり、ミスキャスト等によってワイヤーが曲がってしまう恐れもあって現実的ではないと判断。そこで簡単に入手できるシリコンラバースカートをペラに絡む覚悟で一か八か試作してみました。結果は以外にもペラにシリコンラバーが絡む事は無く、シリコンラバーは水の中に入ると素材自体の適度な張りによって真っ直ぐになろうとするので、シリコンラバーがペラに絡んでいたとしても直ぐに解けてしまうのです。
シリコンラバーを髭にした事により水中で艶めかしく漂うヴィラルの髭、スイム時やフォール時の水平姿勢キープにも一役買っています。
[ラバースレッダ―を使うことでお好みのラバーに交換できます。ラバーはレギュラーサイズ推奨、ラバーの真ん中辺りに1カ所結びコブを作って下さい]
また、ベイトの多くは水平姿勢で泳ぐ事が多いことから、バスも水平姿勢の物に反応が良い傾向があります。無警戒のエビを再現するにも、やはり水平姿勢でスイムさせる事を第一に考え、70mmの小さなボディ、しかも浮力の確保が難しいスリムなエビの形状、更にダブルプロップにパーツの数々、また、スローシンキングモデルだけでなくフローティングモデルも考慮した結果、内部ウェイトには、高価格で高比重なタングステンウェイトを3個も配置することに。
[フローティングモデルの内部ウェイト素材は多少変わりますが、基本タングステンボールによる低重心で水平姿勢とスイム安定性を確保しています]
さらに、エビの腹肢に似せたBKK特注フェザーフックの前後使用は、価格の上昇原因の一つでもあり、フェザーフックは通常の針の数本分の価格にもなります。羽根の種類にもこだわり、エビの模様や腹肢をイメージしたシマ模様の入ったフェザーは、1つ1つ職人によってハンドタイイングされており、フェザーと言うナチュラルさも相まってバスがバイトするトリガーの1つになっている事は間違いないでしょう。またフェザーフックには浮力があるので、スイム時やフォールの姿勢に多大な影響を及ぼすアイテムでもあり、ヴィラル70に最適なセッティングを施したフェザーフックになっています。
[フェザーフックを1カ所だけにしたい場合は、フロント側のみ通常のフックに交換が良いです。リア側を通常のフックにするとフォール時に尻下がりになりますので注意して下さい]
ペラには、極薄ステンレスバネ材を用いる事で軽量化と同時に強度をキープ、軽量なペラにより僅かな水流でも回転へと変換することが可能となっています。ペラの中心に開けられたクローバー形状により、ペラの回転とともに「チリチリ、シャラシャラ、カリカリ」と甲殻類が発するようなシュリンプクリック音を発します。このペラから発するクリック音により、視覚では捉えにくいマッディウォーターでも確実にバスに気付かせることが出来るのです。そして一般的な直線ボディではない歪なボディデザインのヴィラルには、通常のプロップベイトのペラセッティングは通用せず、幾度か前後ヒートン角度の変更を行うことで現在のベストなセッティングになったのです。
[クローバー形状に開けられたペラの穴によって、ペラの回転軸が不規則に回転することで擦過音を発します]
バスが大好きなエビ、皆さんもエビになりきって使ってみてくださいね。
それではみなさん良い釣りを