株式会社イマカツCEO
今江克隆公式ブログ
『弥栄湖戦決勝の奇跡』
詳しくは全てルアマガ取材が入っていたので、11月20日のルアマガで全て見てください。
決勝、朝からメタクロ一本勝負に出てノーフィッシュで迎えた12時30分。
帰着13時15分、エレキでの帰路を考えると事実上、最後の一投。
弥栄湖の超ディープキーパー5匹リミットメイクに匹敵する値千金の1200g。
弥栄湖下流域に響き渡った歓喜の絶叫。
しかし、その5分後、事態はまさに天国から地獄へと豹変する。
出血一切なし、水深は6mほど、抜き上げ着地も問題はなかったはず。
しかし、エア抜きを一発で決めるがライブウエルに入れたバスは裏返り、見る見る体色が褪せ、瞳孔が開いていく。
何が起こったのか理解できない原因不明の瀕死状態。
Gリキッドをライブウエルに適量入れ、必死の蘇生を試みるも、バスの状態は見る見る悪化。
遂に体色は黒味を失い、瞳孔が開ききった目は金目になった。
「あかん、死んだわ…うそやろ…」
呆然とデッキにへたり込み、力なくルアマガ記者に告げた。
その泣きそうな言葉に、もはや回復に一縷の望みもない事はルアマガ記者が一番感じ取ったと思う。
事実、自分自身、「完全死」と諦めた。
そしてその無念と絶望を振りほどくかのように、残り20分、エレキを全開にして会場まで意味の無いキャストを必死に繰り返していた。
途中、ライブウェルを何度も開けて確認するが、もはやその様子は完全に「死魚」に思えた。
だが、会場を目の前にして、どうしても諦めきれず、最後の賭けにでた。
人間で言う「心臓マッサージ」だ。
これは自分が過去最後の手段として何度か瀕死状態から蘇生させた方法だが、流石に今回の「完全死」からの復活は無理だと思っていた。
一つだけ方法が違ったとすれば、予選落ちした青木プロから予備のGリキッド新品2本を置き土産に貰っていた事だ。
最後の処置としてしたのは心臓マッサージに加えGリキッドを実に1匹のバスに1本半を使い切った初めての手法だ。
ルアマガ記者の目の前で行った最後の救急救命処置。
諦めかけた瞬間、死んでいると思っていたとバスの体が、ビクンッと反応した。
自分の手にその感触は確実に伝わった。
しかし、もう時間がない。帰着遅れ失格だけは避けなければならない。
バスをライブウェウルに戻し、祈る気持ちで帰着の列にギリギリで並んだ。
そして、ライブウェルを再度開けた瞬間、奇跡は起こった。
自分は過去、バスを試合で完全死させたのは一度しかない。バスのケアには誰よりも自信はある。
絶対飲まさない電撃フッキングに拘り続けているのもそれが理由だ。
しかし今回の状況からの回復だけは自分の眼を疑った。
冗談ではなく、本気でゾンビか、何かの間違いかと思ったほどだ。
理由を考えるに、その原因は心臓マッサージ時に併用したGリキッドの大量投与しか考えられない。
因みに自分は製造元のギミックとはなんらサポート関係はない。
たまたま貰っただけだが、七色でも決勝最初の一匹を大量出血から助けられた経験が今回の投与に繋がった。
この時もルアマガ記者がその模様は一部始終つぶさに目撃している。
帰着を終え、着岸した時には驚いた事にバスは地力で姿勢をライブウェルの中で保っていた。
しかも明らかに体色が黒く、艶やかに戻っていた。
バスはウェイイン時までには完全に回復し、マイナス100g(検量時腹を見せるとペナルティー)も回避した。
そしてその100g差で全ての勝負が決した事が試合後に発覚する。
このバスが茶色く色褪せ、瞳孔が開き金目になっていたと誰が思うだろうか。
しかし、それは紛れも無い事実なのである。
ショックによる仮死状態、それとも臨死体験だったのだろうか、原因は未だに不明である。
だが、自分が諦めずにした最後の救命処置が、バスを死の淵から救い上げた事だけは間違いない。
その救命方法は勘と経験が重要で、長くなるのでまた改めて紹介するが、一つ言える事は、救命のためには全ての時間、全ての手段を全力全霊を賭けてバスのために使い切る事だ。
歓喜の天国から一転、絶望の地獄へ、そして再び天国へと、TOP50最終戦最終日はジェットコースターのようなラスト30分だった。
リリース時、大勢に見送られ、元気に帰り行くバスの後姿に、今年1年の全ての答えがあった様に思えた。
バスの命の重さを切実に、痛切に感じられる瞬間、それがトーナメントを通じて学べる、釣技より最も大切な事だと改めて思う。